
「最近、高齢者の親が痩せてきた気がする…」

「なんだか前より元気がないけど、ちゃんと栄養は摂れているんだろうか?」

それは、「低栄養状態になっているサイン」かもしれないです。
大切な親御さんの変化に、そんな心配を抱えている方は少なくないでしょう。その気がかりなサイン、もしかしたら高齢者に静かに広がる「低栄養」の問題が関係しているのかもしれません。
低栄養とは…
単に食事量が少ないだけでなく、体に必要なエネルギーやタンパク質などの栄養素が不足している状態のこと。気づかないうちに進行し、高齢者の心身の健康を大きく損なうリスクがあります。
この記事では、高齢者の親御さんの食事や栄養状態が心配な方へ向けて、
など、低栄養のリスクから親御さんを守るための情報を、専門的な視点も交えながら詳しく解説します。

「痩せてきた」「元気がない」といったサインをもとに、適切な対策や栄養管理・周囲のサポートを始めるためのヒントを見つけてください。
なぜ高齢者は「低栄養」に陥りやすいのか?

高齢者が低栄養に陥りやすい背景には、加齢に伴う身体の変化があります。
これに加えて、食欲不振、一人暮らし、経済的な困窮、病気や服用している薬の影響など、身体面、心理面、社会面における様々な要因が複雑に関わっています。
- 加齢に伴う身体的な変化
- 精神的・心理的な要因
- 社会的・環境的な要因
- 病気や薬の影響
加齢に伴う身体的な変化
- 食欲の低下
- 咀嚼・嚥下機能の低下
- 消化吸収能力の低下
食欲の低下は、味覚や嗅覚の衰え、消化機能の低下、満腹感を感じやすくなることなどにより、自然と食事量が減る現象です。
咀嚼・嚥下機能の低下は、歯の問題や飲み込む力の衰えによって、食べられる食材が限られたり、食事が苦痛になったりすることを指します。
消化吸収能力の低下は、食べたものを消化し、栄養素を吸収する能力が若い頃に比べて低下することです。
機能的な「食事を摂って消化する力」が低下することによって、根本的な食事に対する意欲も下がってしまいます。

ずっと胃がムカムカして食欲が湧かない…というような感覚に似ています。
精神的・心理的な要因
- 意欲の低下・抑うつ
- 認知症
- 「食べること」への関心の低下
意欲の低下や抑うつは、配偶者との死別、社会的孤立、役割の喪失感などから気分が落ち込み、食事への関心や準備する意欲が失われることで起こります。
「一人で食べても美味しくない」「作るのが面倒」といった心理が働くことがあります。
認知症の場合は、食事をしたことを忘れる、食べ物の認識ができない、食事の準備や手順が分からなくなるなど、認知機能の低下が直接的に低栄養につながります。
また、加齢とともに活動量が減り、空腹を感じにくくなることや、食事が単なる「作業」になってしまい、楽しみを感じられなくなることは、「食べること」への関心の低下として影響します。
社会的・環境的な要因

- 孤食(一人暮らし)
- 経済的な問題
- 買い物や調理の困難
孤食は、一人で食事をすることが多くなることで、食事の品数が減ったり、簡単なもので済ませたり、食事時間が不規則になったりする状態です。
経済的な問題は、年金収入だけでは栄養バランスの取れた食材を十分に購入できない場合に起こります。
買い物や調理の困難は、足腰が弱って買い物に行くのが大変だったり、重い荷物を持てなかったり、調理器具を安全に使えなかったりすることで食事の準備が難しくなる状況を指します。
病気や服薬している薬の影響

- 慢性疾患
- 薬の副作用
病気や薬の影響も、高齢者の低栄養を引き起こす要因の一つです。
慢性疾患(心臓病、腎臓病、糖尿病、呼吸器疾患など)を患っている場合、食欲不振や代謝の変化、食事制限などにより栄養状態が悪化しやすくなります。
服用している薬の副作用として、吐き気、食欲不振、味覚変化などが現れ、食事が十分に摂れなくなることもあります。

具体的な「低栄養の危険サイン」はこちらの記事で詳しく解説しています!
高齢者の低栄養を防ぐ・改善するための対策

低栄養のリスクを減らし、改善するためには、多角的なアプローチが必要です。
高齢者の低栄養リスクを減らし、健康を維持するためには、食事内容の見直し、食欲不振や孤食への対策、医療・福祉サービスとの連携、栄養補助食品の活用など、さまざまな対策があります。
- 食事内容や食べ方の工夫
- 食事環境や心理面へのアプローチ
- 医療や福祉サービスとの連携
- 栄養補助の活用
高齢者に合った食事内容や食べ方の工夫
- 栄養バランスの良い食事
- 食べやすい工夫
- 少量・頻回食
- 彩りや盛り付け
高齢者の低栄養を防ぐ・改善するためには、栄養バランスの良い食事、食べやすい工夫、少量・頻回食、彩りや盛り付けの4点が重要です。
特に「タンパク質」を意識して食べやすい調理法を取り入れ、食事回数を増やし、見た目にも配慮することで、高齢者の栄養状態の改善が期待できます。

彩りや盛り付けを華やかにすることで、食欲が刺激されますよ。
食事環境や心理面へのアプローチ

- 「共食」の機会を作る
- 食事に集中できる環境
- 本人の意欲を引き出す
- うつ病や認知症への対応
高齢者の低栄養を防ぐ・改善するための食事環境や心理面へのアプローチとして、「共食」の機会を作ることが重要です。
家族や友人、地域の会食サービス、デイサービスなどを利用し、誰かと一緒に楽しく食事をする機会を持つようにしましょう。

「だれかと一緒に食事をたべること」って、すごく大事なんです。
また、食事に集中できる環境を整えることも大切です。テレビを消すなどして、落ち着いて食事に集中できるような工夫をしてください。
さらに、本人の意欲を引き出すことも重要です。好きなメニューを取り入れたり、簡単な調理を手伝ってもらったりするなど、食事への関心を高める工夫をしましょう。心理的なサポートも欠かせません。
うつ病や認知症などが影響している場合は、必要に応じて医療機関を受診し、適切な治療やケアを受けるようにしましょう。
医療や高齢者が利用できる福祉サービスとの連携
- かかりつけ医への相談
- 管理栄養士への相談(食事内容の工夫や調理サポート)
- 歯科医への相談(義歯の調整、口腔ケア)
- 配食サービスや買い物支援の活用
- 訪問介護サービスの利用
定期的にかかりつけ医に健康状態をチェックしてもらい、低栄養のリスクについて相談すること、服用している薬の副作用についても確認することが重要です。
食事内容や栄養摂取については、管理栄養士に専門的なアドバイスを受けることができます。

食事のことなら、私たち管理栄養士にお任せください!
口腔ケアや義歯の調整は歯科医に相談しましょう。
自宅での調理や買い物が困難な場合は、配食サービスや買い物支援の活用が有効です。さらに、調理や食事の介助が必要な場合は、訪問介護サービスの利用を検討しましょう。
高齢者のための栄養補助食品の活用
食事だけでは栄養が不足する場合、医師や管理栄養士の指導のもと、ドリンクタイプやゼリータイプなどの栄養補助食品を適切に利用することが推奨されます。
高齢者の低栄養を放置すると、どうなるの…?

高齢者で低栄養の状態が続くと、心身に様々な悪影響が現れます。
もともと筋肉量が少なく、体の中での代謝効率や回復力が遅くなっているため、小さなきっかけであっても複合的に絡み合う健康リスクに発展していきます。
- 筋肉量の減少(サルコペニア):筋力が低下し、転倒・骨折のリスクが高まる。活動能力が低下し、寝たきりにつながることも。
- 免疫力の低下:感染症(肺炎、尿路感染など)にかかりやすくなり、重症化しやすくなる。
- 傷の治りが遅くなる:手術後の回復が遅れたり、床ずれ(褥瘡)ができやすくなったりする。
- 認知機能の低下:記憶力や判断力が低下し、認知症の進行を早める可能性も指摘されている。
- 貧血:鉄分やビタミンB12などの不足により、めまいやふらつき、倦怠感を引き起こす。
- 骨粗しょう症のリスク増加:カルシウムやビタミンDの不足により、骨がもろくなる。
- QOL(生活の質)の低下:全身の倦怠感や意欲低下により、活動範囲が狭まり、生活の質が著しく低下する。
- 死亡リスクの増加:低栄養は様々な病気の引き金となり、全体的な死亡リスクを高める。
高齢者の栄養不足は、単に体重が減少するだけでなく、体の様々な機能が著しく低下してしまいます。
筋肉が減ることで病気にかかりやすくなり、頭もぼんやりとしてしまうことがあります。

親御さんが元気でいられる期間が短くなるのは、避けたいですよね…
特に、体を動かすのが億劫になったり、食欲不振によって栄養が不足すると、急速に悪循環に陥ることがありますので、早期の対応が重要です。様々な専門家が連携し、食事、運動、そして生活全体を見直すことが大切です。
高齢者の低栄養状態を早期発見するためのサイン

高齢者の低栄養による健康リスクを防ぐためには、家族や周囲の人がいち早く低栄養の予兆に気づくことが重要です。
必ずしも、すぐに医療的な介入が必要な状態であるとは限りませんが、生活のサポートが必要な状態である可能性もあります。
以下のようなサインが見られたら注意が必要です。
体重の減少
意図せず体重が減っている(例:半年で2~3kg以上、または5%以上の減少)
衣服や指輪のゆるみ
以前着ていた服やズボン、指輪などがゆるくなっている
食事量の変化
食欲がない、食べる量が明らかに減った、好き嫌いが激しくなった、同じものばかり食べる

お米中心の食事や、お茶漬けのような飲み込みやすい食事をひんぱんに摂るようになっている場合も注意が必要です。
食事内容の変化
肉や魚を避ける、あっさりしたものばかり好む、調理されたものを買わなくなった
活力の低下
疲れやすい、元気がない、日中ぼーっとしていることが多い、活動量が減った
身体的な変化
筋肉が落ちて腕や脚が細くなった、皮膚がカサカサしている、口内炎や口角炎ができやすい、傷が治りにくい、むくみがある
その他
冷蔵庫に食材がほとんどない、または古い食材ばかり入っている、買い物に行くのが億劫そう、薬の飲み忘れが多い
体重減少、衣服の緩み、食事量の減少、元気のなさなどは、特にわかりやすい栄養不足の早期発見のサインです。
これらのサインは、低栄養だけでなく、他の病気が隠れている可能性もあります。気になる変化があったときには、早めにかかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談しましょう。
まとめ

高齢者の低栄養は、本人の心理状態や生活環境、身体機能の変化など、様々な要因が絡み合って起こります。それは、単に「食が細くなった」という問題ではなく、心身の健康をおびやかし、生活の質を低下させる深刻な健康リスクです。
低栄養の対策には、本人の状態に合わせた食事の工夫、心理的なサポート、社会的な支援、医療との連携など、多角的なアプローチが不可欠です。そして何より、周囲が早期発見のサインに気づき、適切な対応や支援につなげることが大切です。
親御さんの生活状況に不安や心配を感じるようであれば、ぜひ一度、かかりつけの病院で状況を相談したり、自治体の相談窓口をたずねたりしてみてください。

社会全体での低栄養への理解とサポートの輪は徐々に広まっています!
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